PART.62 闇の精霊の怒り
エル「私が闇の力に支配される・・・?」
闇の精霊「いいか?オレは強くなった。多くの遺物から力を吸収し、そんじょそこらの闇には決して到達できない領域にまで上り詰めた。だが、お前はまだ弱い。」
エル「・・・なに?あなたが強くなれば私も強くなるって、自分で言ったんじゃない!嘘だったってこと!?」
闇の精霊「違う。オマエは闇の力の使い方を分かっていないんだ。闇の力は闇の意志に支配される時、初めてその真価を発揮する。」
エル「・・・闇にのまれろと・・・?」
闇の精霊「ほんの少しの間だけだ。それでオマエの身体を乗っ取ろうなどとは考えていない。オマエにはまだまだしてもらいたいことがあるからな。クク」
エル「・・・今回だけよ」
闇の精霊「よし。いいか?オレの怒りの感情をオマエに与える。それを吸収し、全てオマエの力としろ。負の感情こそ、闇の力を最大限に高める唯一の方法だ。」
カバリ「・・・またこそこそと。作戦会議は終わったか?」
カバリの馬が近づいてくる。
エル「・・・」
闇の精霊「・・・さぁ・・・いくぞ。宿せ!オレの怒りを!!!」
ズォォォォォオ・・・
闇の精霊から大量の吹き出した負のオーラ、「闇の精霊の怒り」を吸収した。
力がみなぎる・・・目の前の強敵につい先程までなすすべなく圧倒されていたのに、なぜか今ではその体が少し小さく見える。
視界が黒ずむ。しかし、カバリの動きは手にとるようにわかる。
カバリ「先程までと雰囲気が変わった・・・」
コロス・・・
カバリ「・・・?」
コロスコロスコロスコロスコロス!!!!!!
カバリ「!!」
カバリは戦士の勘で危険を察知したのか、焦ったように馬に命じて距離をとらせる。
カバリ「何だ貴様・・・!何だその力は!!!!」
この感情はなんだ?
私の感情・・・?
いやちがう・・・。
私はこんな・・・。
こんな感情を・・・抱くはずが・・・。
エル「グク・・・・クククク・・・・アハハハハハハハ!!!!」
私は嗤う。何がおかしいのか。どうして嗤っているのか。わからない。
自分でも耳をふさぎたくなるほど甲高く、無秩序で、不快になる嗤い声だった。
カバリ「・・・お前は・・・お前は・・・!!」
そこで私の意識は消えた。
・・・・・・
・・・
気づいたらカバリは倒れていた。馬は撲殺され、カバリも鎧のいたる所にへこみがあり、所々身体にめり込んでいた。
カバリ「・・・っごふ」
(´・ω・`)「・・・」
カバリ「・・・闇の者・・・」
(´・ω・`)「私のこと?」
カバリ「・・・他に誰がいる・・・。お前は闇。闇そのものだ。」
(´・ω・`)「いいえ。違います。燦然と輝く光です。勘違いしないでください」
カバリ「ふん・・・正気に戻ったか・・・。まぁいい。っごほ・・・!ふ、ふふふ。私も死ぬのだな」
(´・ω・`)「死ぬの?」
カバリ「・・・いや、元の姿に戻るのか・・・。私はもとより死んでいた。闇によって生かされていただけに過ぎない。」
(´・ω・`)「そうだったの。」
カバリ「はは・・・あれから何十年経ったのだろう・・・もはや私が復讐を誓った者共など、この世に存在しないかも知れないのに。私は何のために生かされていたのか・・・」
(´・ω・`)「・・・」
カバリ「エル・・・だったか。お前の闇は必ず、お前の精神を乗っ取るだろう。私がそうであったように。お前もそうなるだろう。」
(´・ω・`)「ならないわ」
カバリ「いいや、なる。闇の力を受け取った時、お前は正気でいられたか・・・?」
(´・ω・`)「・・・」
カバリ「ごふっ・・・まぁよい・・・。はぁ・・・死か・・・ようやく闇から解放されるのだな・・・。」
(´・ω・`)「そうね。感謝しなさい」
カバリ「ふ・・・ひと目見た時から、阿呆の間抜けに思えたが、あながち間違いではなかった。まぁしかし、感謝する。」
カバリの頭の鎧が外れた。腐りかけの肉体。それはもはや生物としての基本的機能を有していなかった。しかし、おそらく生前は瞳があったであろう所から、一筋の涙がこぼれたように見えた。
カバリ「妻や娘とは同じところには行けぬだろうな・・・。私は悪を重ねすぎた。」
(´・ω・`)「・・・まぁたしかに。・・・んじゃ、死後は善行に励みなさい。そしたらお天道様が家族に会わせてくれるかも知れないわよ」
カバリ「ふ・・・一体どれほどの善行を積めば、彼女たちのいるところまでたどり着けるのだろうな・・・」
吹き付ける風によって、カバリの身体はボロボロと崩れ落ち、砂になって散り散りになっていく。
カバリ「エル・・・すまない・・・しかし・・・、決して闇に・・・のまれる・・・な・・・」
カバリは消えた。
闘技場では大きな歓声が起きている。
しかしこの歓声も、今の私にはただ煩わしく感じられた。