PART.72 闇の精霊の裏切り、そしてもう一つの・・・。
エル「いた・・・」
マウディはメディア城の前にロバと一緒に立っていた。私が来るのを待っていたかのようにこちらを見ながら手を広げて言う。
マウディ「ようこそ」
エル「・・・あんた何してんの?」
マウディ「フ・・・フフフ。ここまで来たことは褒めてやる。エルよ。」
以前までと口調が違う・・・。シラレの予言の『黒い影』とはやはり・・・。
マウディ「何を隠そう、私が闇の女神の祭司長だ。」
エル「闇の女神の祭司長?・・・マウディ・・・やはりお前が・・・。」
マウディ「私の策略にまんまとはまりおって。君はネルダ・シェンとバリーズ王家のことばかりに気を取られ、私のことなど一切怪しんではいなかっただろう。クク、滑稽だったぞ。彼らのために必死で奔走する君の姿はな。最終的に真相にたどり着いたようだが・・・遅すぎたな。」
エル「・・・」
マウディ「メディアは堕落した。もう闇の力でしか回復出来ない。だがこれもすべて、イレズラ様の計画。」
エル「何が目的・・・?」
マウディ「君だよ。」
エル「私・・・?」
マウディ「君が私の前に現れた瞬間に。私はこれがイレズラ様の計画だと気づいた。」
エル「何を言ってるの・・・?」
マウディ「いるんだろう?出てこい。闇の精霊」
マウディが呼びかけると、私の後ろにいた闇の精霊が彼の前に姿を現す。
エル「・・・」
闇の精霊「ヒ・・・・ヒヒヒ・・・・ヒヒヒヒヒ」
エル「ちょっと、何してるのよ。引っ込みなさい。いま忙しいの!」
しかし闇の精霊は私の話などまるで聞く様子もない。
マウディ「君と一緒にいるこの精霊を見て、ひと目で分かった。その姿が彼女たちのものとそっくりだと!」
エル「この闇の精霊が・・・?一体誰のと・・・?」
マウディ「カルティアン、そしてイレズラ様だ」
エル「カルティアン・・・?」
マウディ「はぁ・・・記憶に通じぬ者だ。何も知り得ぬまま死ぬとはげに嘆かわしい。まぁしかし、君には感謝するよ。なぜならイレズラ様の力を受け入れる器となるのだから・・・!」
エル「器?私が?そんなものになるわけ・・・!」
闇の精霊「お前の意志は関係ない」
エル「・・・は?」
マウディ「その通りだ。君は器となる運命。君を器にするために、気づかぬ振りをして印章の入った箱を盗ませたのだよ。」
エル「・・・気づいてたの・・・?」
マウディ「ははは!それほど大事なものを一介の冒険者に易易と盗まれるほど、ずさんな管理をするわけがないだろう。」
エル「あんたら・・・」
マウディ「その箱の黒い印章で闇の精霊は力を増大させる。そしてその箱にお前の力を、その魂もろとも封印させてもらおう。ま。おせっかいな自分を恨むんだな。だが、メディア王国の復活の礎となった君のことは、歴史家として覚えておくとしよう。」
闇の精霊「ヒ・・・ヒヒヒ・・・・グヒヒヒヒ!!」
闇の精霊よ・・・黒い太陽を呼び出せ・・・!!!
大いなる闇の力だろうか。先程まで明るかった空が急に黒ずむ。
闇の精霊「グヒョ・・・グキキ!!グオォォオオ!!!」
闇の精霊が力を増す。
マウディ「やれ。闇の精霊!」
闇の精霊は、二つの角を生やした大きな黒い化け物へと姿を変えた。
闇の精霊「グギ・・・・・ギ、ギヘ・・・・グ・・・グフフ!!」
エル「あんた、ついに裏切ったわね」
闇の精霊「・・・もうオレはオマエより強い。強いものが弱いものを治める。ならばオマエはオレに従うべきだろう。」
エル「八つ裂きにしてやるわ。今まで私のことを散々馬鹿にした付けを払ってもらうんだから!」
闇の精霊「・・・もはやオマエを相手にする意味はない。」
エル「なに・・・?」
闇の精霊「今この時、闇こそが世界を支配する。オマエの存在など、取るに足らない。」
闇の精霊は闇を生み出す。無数の闇のオーラがあたりに広がる。
そのオーラは一つ一つが邪悪と憎悪に満ち溢れているようだ
闇の精霊「闇に呑まれろ・・・」
エル「な・・・・っ!!?」
その時、世界はその姿を変えた。
・・・・・・
・・・
そこには何もなかった。
楽しさも、苦しみも、喜びも、哀しみも、希望も、絶望も。
世界は空虚だった。ただ真っ白で、光も闇もなかった。
小さな姿をした闇の精霊が目の前にちょこんと現れる。
久々に見る姿だ。彼は甲高い声でこう言う。
「これはお前が望んだ世界」
望んだ・・・?この真っ白い世界を?
「空白の世界を。世の終わりを。」
・・・なにを・・・!そんなわけが・・・!
「いいや。お前は望んだ。だからオレと契約した。」
別の闇の精霊が現れる。
「最初に言ったはずだ。契約をした時に。オマエは最後、闇にのまれなければならないと。」
また別の闇の精霊が現れる。
「そのためにオレはオマエに力を与えたはずだ。」
・・・なぜ私は力を欲した・・・?
「この世界を壊すために。苦しみ。痛み。憎しみ。それら全てを無きものとするために。」
「人は愚かだ。人よりも強くなろうとし、賢くなろうとし、偉くなろうとする。そうして人はお互いに敵対し、争い、殺し合う。」
「オマエはその人の愚かさに抗おうとした。世界に平和を。愛を。希望をもたらそうとした。」
「しかしどうだ?お前が得ている平和は、誰かの苦しみの上にある。お前が求めた愛は、誰かの諦めの上にある。お前が抱いた希望は、誰かの絶望の上にある。」
光がある所に、闇はある。闇は消えることはない。
ならば壊せばいい。すべてを失くせばいい。世界を滅ぼせばいい。
殺せ。消せ。失くせ。滅ぼせ。人を。秩序を。世界を。
お前にはその力がある。それがお前の望んだ力。お前がすべてを失くせば、世界にはもう苦しみはなくなる。
「ケラケラケラケラケラ」
「ケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラ」
さぁ!力を取れ。この世界を終わらせる力を・・・。
ーーーーーーーー聞かないで!!
誰かの声がする。
「聞かないで!!!!」
エル「・・・妖精ちゃん!」
妖精「よかった、戻ってこれた」
エル「あのやろう・・・精神攻撃してきやがって・・・。」
妖精「アイツはあなたの精神を飲み込もうとしている。決してもっていかれてはだめ!」
エル「・・・うん」
闇の精霊「ケラケラケラケラ!!!何も知らない冒険者。何も知らないのに。なぜ多くの人を、種族をコロシタ?自分の記憶のために?グクク!!!オマエに正義はあるのか?」
エル「・・・」
妖精「エルちゃん。あいつの言葉に惑わされちゃだめ・・・!!」
闇の精霊「現実から目をそらすか?それがオマエの決断か?信念もなにもないのに、力を振りかざして多くの物の命を奪った?それなら、オマエは闇そのものだ。」
エル「いいえ。」
闇の精霊「ではオマエは何だと言うんだ?」
妖精「だめ!!闇と分かりあえることなんてない!!話に付き合ってはだめなの!!」
闇の精霊「確立してみせろ。お前の立場を。お前の正義を。」
・・・
エル「何度もいいますが。」
闇の精霊「・・・?」
エル「私は燦然と輝く光です。」
妖精「・・・これはいけない・・・。」
闇の精霊「光・・・?お前のどこが。」
エル「もし仮に、私が闇だとしても・・・」
闇の精霊「・・・?」
エル「私は燦然と輝く光そのものです。」
闇の精霊「・・・???」
妖精「まって?」
闇の精霊「・・・闇だったら・・・・・・闇だろ・・・?」
エル「・・・」
妖精「・・・・・・」
闇の精霊「・・・・・・・・・????」
( ゚д゚)「うるせぇんじゃこら収集つかねぇだろシネェエエエエエエエエ!!!!!」
ボゴオオオオオ!!!!!ドゴドゴ!!!ボゴグサグリュ!!!!
闇の精霊「嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼!!!!!!!」
妖精「うわああああああああああああああああああ!!!!」
ちーん。
妖精「・・・」
(*‘ω‘ *)「・・・いやね?違うのよ」
妖精「どうしてそういうことしちゃうのかな?」
(*‘ω‘ *)「・・・」
妖精「ねぇエルちゃん。もうこういうこと二度としないって約束したよね?最初の方頑張ってたじゃない。カメラの映像加工とかしてさ。私知ってるのよ?一生懸命仕事しながらどういう物語展開で闇落ちしかけるエルちゃんが描けるかなとか考えてたよね?なんで最後の最後で諦めるの?ねぇ。これだと、私が出た時はネタ回みたいに読者の皆様に覚えられちゃうよね?まぁでもそれはいいの。別に怒ってるわけじゃないのよ?これからのエルちゃん、それでいいのかっていうことを聞いてるの。まとめ方がわからないからってこういう強引な締め方はどうかと思うの。あのさ、そうやって逃げてばっかりじゃいつまでたっても」
( ゚д゚)「うるせぇばーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
続く(⌒▽⌒)